「悪ぃな、俺そこまで甘くねぇんだ。あとで礼は受け取ってもらうからな……いい子にして待ってろよ」


鋭い視線。桜はドキッとする。いつもみているおちゃらけたお気楽雰囲気何か微塵も感じられない氷のように冷たい…桜の知らない太陽の顔。


「桜帰るぞ」


太陽に抱きあげられる。

「待って。武志!」
「あ?」


太陽の腕を抜けて下に降りるも足がうまく動かない。ストンと両膝をつく。

「何アイツ」
「クラスメートなの。私を庇って怪我しちゃって……」
「ふーん……」


腕を引き上げ桜を抱き直すと、太陽は武志に近付く。


「こいつ貰ってくわ」
「なっ、タケいなくなったら誰パシリに使うんだよ」
「何か文句あんの?」
「いやっ……ないです」
「ふん……おら立てよ」


片手で武志の服を掴んで乱暴に立たせる。腹を押さえてヨロヨロと立ち上がる。


「付いて来い」


顎で合図をして扉を開けて外に出る。眩しくて一瞬目が眩む。

「ごほっ……」
「武志ごめんね。私なんか庇ったから…」
「いや………江本には色々世話になってるし。今回退学になるのお前口聞いてくれたんだって?」


「取り込み中悪いんだけどさぁ」

太陽の声にビクッと身体をこわ張らせる武志。ガタガタ身体が震えている。

「なんで怯えてるの?」
「なんでってお前っ。その人誰だか分かってんのか?毬谷太陽さんていったら……。」
「それ以上言うな?」

不機嫌な太陽の声。途端に武志の顔が青ざめる。今から自分はどう処分されるのだろう。果たして生きて帰れるんだろうか…。


「ねぇ太陽。太陽からもお礼言って?私武志居なかったらマジでヤバかった」
「バカお前そんなん……」
「サンキューな」


素直な太陽の言葉に武志はあんぐり。両手を振って動揺している。
「つうか、お前『R』の舎弟だろ?悪いけどさぁあそこ潰すわ。桜助けてくれたから言うけどぉ、もう戻らない方がいいよ?痛い目見たくなかったら☆」
「えっ」


桜をバイクの後ろに下ろす。太陽は桜の身体を怪我がないか確認しながらあちこち触る。

「よし。大丈夫だな。あとあのクソにどこ触られた?」