癖のあるマフラー音に聞き覚えがある。店内で自由気ままに見物していた5人の動きが一斉に止まる。みんな動揺している。

「あの音、まさか……おいマサ止めろ」


マサと呼ばれた男だけは夢中になって気付かず、桜に馬乗りになって押さえ付けたままミニスカートの中に手を滑り込ませた時だった。バン!と扉を開ける音。長身のシルエット…。

「桜!」
「ヤダっ!太陽っ…」

桜の姿を見つけた太陽。逆光で桜から表情は見えない。


「うわっ、やっぱり太陽!マサどけろ!ヤバい、それ太陽の女だ」
「だれ?太陽って。それよりこの女スベスベ♪いい手触り………ふごっ」


一瞬だった。太陽は怪我も構わず力任せにマサの身体を桜から引き離すと同時に顔面に回し蹴りを決めた。靴の裏が顔に食い込む。鮮血と歯のかけらが飛び散る。

「ぐあぁぁっ!」
「お前死刑決定」


倒れ込んだマサに何度も蹴りを入れる。


「太陽~…」


桜の震える声。自分の体をギュッと抱き締める。震えが止まらない。脚にまだあの手の感触……。太陽はハッと我に返って桜に駆け寄る。いつものクールな顔じゃない心配でしょうがなかったという顔…。荒々しく震える桜を抱き締める。労るようにそっと抱き締める元気とは違うけど、珍しく桜は抵抗しない。太陽の熱い身体と速まった鼓動に安心感を覚える。


「よかった見つかって。元気兄ィに桜出掛けたって聞いて、俺の携帯見たら着信履歴あったから。まさかと思ってナオ問い詰めたらここに呼び出したって……間に合ってよかった」
「なんでぇ?太陽に課題届けてってだけでここきたのに…なんで」
「ハメられたんだよ。悪ぃ、俺のせいだ」
「!?」

訳がわからない。桜を抱く太陽の腕に力が入る。桜の首筋に埋められた太陽の顔が急に離れる。

「おめぇら。理由はどうあれ、俺の連れに手出ししてどうなるか覚悟はできてんだろうな……」
「待ってよ。太陽の連れだって知ってたら俺らが助けてるよ、なぁ」
「マサは新入りでさぁ。この辺の勢力図まだ理解してなくて……許してよ」


5人もいて1人相手に相当ビビっている。どういう関係なのか桜には分からなかったけど……また太陽が助けてくれた。