-なんかここ、ヤバくない?でも中に入らないとナオさんに会えないし…-


意を決して扉を開ける。明るいところから急に入ってよく中が見えない。タバコとお酒と色々な香りが入り交じってる……息が詰まりそう。

「あれ~?お嬢ちゃん何か用事?」

横を見ると頭を赤く染めて耳いっぱいにピアスをした男の子。

「つうかお前っ。江本じゃね?なんでここにいんだよ!」
「武志?」


同じクラスの男の子。桜は男子とも女子とも仲がいい。その中でも武志はいわゆる不良生徒で確か夏休み直前に停学になったはず…。

「こんなとこ来んな。早く帰れ!」
「あたしここで人と待ち合わせてんのよ。ねぇ武志、ナオさんて女の人知らない?」
「あれれ~?珍しいお客さんだな~タケの女?」


店の奥から男の声。5人位いるだろうか、思い思いにグラスを傾ける者、タバコを咥える者…そして全員がこっちを見てる。

「いや。同じクラスのコっす、迷って入って来たみたいだから…」
武志は背中に桜を隠すと、小声で「早く行け」と後ろ手で出口の方に押しやる。


「帰すことなくね?」

いつの間に背後に回ったのか扉の前に1人ニヤニヤしながら立っている。桜を舐めるように見回して腕をつかむ。

「マサさん勘弁してやってくださいよ」

武志が桜を庇って前に出ると勢いよく足が飛び腹部を蹴られた武志が吹っ飛んだ。


「武志!」
「誰に指図してんの~?俺はやりたいようにすんの」
「…………最低」
「は?」
「あんた最っ低!離せバカ!」

掴まれた腕を振りほどくと桜は武志に駆け寄る。

「武志大丈夫?」
「……っ、俺の事なんかほっとけ。お前自分の心配しろよ」


背後に迫る人の気配。突然桜は髪を掴まれて引きづられる。


「痛っ、放してよっ」
「悪い子にはさぁ、お仕置しないとね」


目が血走ってる。押さえ付けられて太股を撫でられる。ゴツゴツした手。気持ち悪い。

-ヤバい。やられる-

抵抗しても男の力には勝てないのを身を持って知ってる桜。なんでこんな事になったんだろう。でも絶対最後まで抵抗してやる。その時だった。


-……ン、オン、オンッ!キーーッ-