「ん………」

眩しくて目が覚める。時計を見るとまだ6時。隣りを見ると元気がまだ寝息を立ててる。そっと腕からすり抜けて起き上がる。


-元兄ィのうそつき…早く帰ってこなかったじゃん。アイツと一緒にいたの?ねぇ!-


心の中で問い掛ける。見慣れてる元気の寝顔。伏せられた長いまつ毛、うっすら開いた唇。

-この唇でアイツとキスしたの!?ねぇ、し~た~の~?-

段々腹が立ってきた。昨晩、よく聞こえなかったけど太陽が女の香水の匂いするって言ってた。元気の首筋に近付いてみる。シャボンの香り。証拠湮滅か……。悔しい。桜はうっすら開いたその唇にそっと自分の唇を重ねた。元気とキスするのは初めてじゃない。最近まで頬にキスは当り前。太陽とパパとも。でも最後に唇を合わせたのは10年くらい前の話だ。昔と同じ柔らかくて温かい…。


「んっ……」

元気は息苦しくなったのかもぞっと動いて寝返りを打つ。


「ふん、遅くなった罰だよ…」


ほとんど聞こえないような小さい声で元気の耳元で呟くと桜は部屋を後にした。



-ガチャッ-


「ママおはよ♪」
「あら桜ちゃんおはよ♪今日は早いのねぇ」
「うん。何か眠れなくて…家帰って着替えて来る」
「あら、桜ちゃんも眠れなかったの?」
「もって?」
「太陽も珍しく眠れなかったみたいね。いつもは朝寝坊なのに…さっき起きて来たのよ」


桜はリビングから出てみる。いた。洗面所で何かやってる。

「太陽」
「うわっ」
「何ビックリしてるのよ」

太陽が何かを後ろに隠したのを桜は見逃さなかった。

「何隠したのよ」
「なんも?それより桜ちゃんそんな格好でうろついてると襲っちゃうよ?」
「話をはぐらかさないでよ」


後ろに回している左手を強引に掴まえる。何だか太陽の身体が熱っぽい気がする。右手を怪我しているから思うように抵抗できない太陽から取り上げた小さい袋。

「痛み止め……太陽、傷痛むの?」
「全っ然」


桜は手を伸ばしてぐいっと太陽の首筋に掴まって太陽の顔と自分の顔を近付ける。頬同士が触れる。やっぱり…。

「熱ある…太陽」
「お袋には言うな。薬飲んだし大丈夫だから」
「でも……」