少しの沈黙の後、優が言った。



「でも、お前のじいちゃんすごいな」



私はこの言葉の意味が分からなかった。

「だって、形は違ったかもしれないけど、ちゃんと家で年を越したんだろう」

「……」

「本当にすごいよ」



私から言葉は出てこなかった。

けれど、なぜだか急に涙が出てきた。

今まで全然泣けなかったのに。



「優、ありがとう。今の言葉なんか嬉しかった」

祖父が今日亡くなったことにも意味があるんだろうなと思えてきた。

元気な姿で家に帰ることは出来なかったけれど、遺体という姿ではあったけれども、家で年を越した祖父。

意地でも帰ってきた祖父に、昔の頑固だったころの祖父の姿を思い出し、少し暖かな気持ちになった。




祖父は最後まで祖父だったんだ、そう思った。

そうしたら、大きかった後悔の気持ちよりも別の気持ちが大きくなった。

「優に電話してよかった。いつも欲しい言葉くれてありがとう」

優の前では素直になれた。

誰の前でも、一人になっても涙は出なかったのに。

電話したことを本当に良かったと思う。