あの頃から10年の月日が経った。

小学生だった私も今は社会人1年生。

病院で理学療法士として勤めている。

あの頑固だった祖父も10年あれば大きく変わり、今ではよく笑い、昔の頑固さが嘘みたいである。

昔との大きな違いは他にもあった。

しゃきしゃきと元気だった祖父も90歳近くなり、シルバーカーや杖を使って短距離を歩くのがやっとになってしまった。

肺に病気も患い入退院を繰り返していた。

そして難聴も進み、大声で話さなければ会話も出来ない状態で、私と姉以外の孫たちは会話をするのも嫌がっていた。

看護師をしている姉と、私は難聴の人と話すことに何の違和感も無い。

だってそれは日常だから。

けれど、それが日常じゃない人もいる。

それを痛感させられた。

姉と私は最近では、よく祖父の家へ顔を出すようになっていた。

私たちが遊びにいったときに見せてくれる祖父の笑顔が大好きだった。

本当に嬉しそうに笑うんだ。




「また来たな」

そういって、笑顔で迎えてくれる祖父。


「いつでも来い」

そういって、毎回見送りをしてくれる祖父。



初めは、玄関でやり取りをしていた。

それが、居間にいる祖父に私たちが会いに行くようになった。

自室で寝ている祖父に会いに行くようになった。

約1年間での出来事だった。




たった1年間で、祖父はあっという間に弱っていった。

これが老いなのだろうか。

人の儚さを改めて知った。