しばらく歩いてると、ラビリスもスライムもフィーノスもウォーウルフも見かけなくなった。代わりに、見たこともない鳥とか動物がそこらへんを歩いていた。

「この辺からが多分、トール山だね」

シオンが呟いた。俺も、ちょうどシオンと同じことを考えていたところだった。

「ここにドラゴンがいるのか…こんなとこに連れてこられて、アルカちゃんは無事なのか?」

「分からない。でも、今の僕らはアルカちゃんを無事に助け出すことだけ考えないと…」

「そうだな」

俺達はこの魔窟に足を踏み入れることにした。その時だった。ドラゴンの咆哮みたいな声が聞こえたのは。

「おい、シオン、今のは…」

「ドラゴンだ!声が聞こえた方に行ってみよう!」

「おう!」

俺達は走り出した。そこらへんのモンスター達は、ドラゴンの咆哮にビビったのか、ちっとも出てこねぇ。ラッキーだな。今のウチにドラゴンのとこまで一気に行ってやる!

てな訳で進んでたら、洞窟みたいな洞穴に辿り着いた。

「危険そうだね…どうする?」

「行くしかねぇだろ!」

「うん!そう来なくっちゃ!」

で、中に入ってみたけど…。

なんか壁とか天井に苔が繁殖しまくって気持ち悪ぃ。俺、気持ち悪ぃの嫌いなんだけどな…。

あれ?なんか、向こうから光が差してるのが見える。洞窟の中だから光が入るはずないのに、おかしいな。

「シオン、あの光どう思う?」

「探索してみる価値はありそうだね」

「よっし、じゃあ行くか!」

……………。

何だ、これ…。

そこら中にフィーノスの死骸…いや骨が散乱してる。ドラゴンが喰い漁った後なのか。これじゃアルカちゃんはもう…。

「あっ!」

「どうした、シオン?」

「あそこに人影が!」

「マジか!?」

もしかして、アルカちゃんか?でも、フィーノスがこんなに喰い散らかされてるんだから、もう白骨化しててもおかしくないな…。

「…うぅ、ひっく…」

…!泣き声だ!生きてる!

「アルカちゃん!」

「ひっく…あ、貴方達は…?」

「助けに来たんだ。もう大丈夫だよ」

「…げて…」

「…?」

「ドラゴンが戻ってこないうちに逃げてください!私はなんとか隠れてたから今は助かってますが、じきに殺されます…貴方達も、殺されないうちに…」