『えぇっ!?』って何だよハゲ!…あ、いや、ハゲてないわ。若いしフサフサだこのオッサン。

「失礼しました。これでアンケートは終了です。そして…」

オッサンはパチン、と指を鳴らした。

「ゲームスタートです」

そう言われた後の記憶が無い。

………。





あれDAAAAA!!

もしかして、本当にゲームの世界に入っちまったのか!?嘘だろ…ありえねぇよそんな話!

って思ったけど、頬をつねってみたら痛かった。夢じゃないのか。マジなのか。

落ち着け。落ち着くんだ俺。冷静に考えろ。ゲームの世界に入ったんだとしたら、まずするべきことは…。

周りの人の話を聞くことだ。

とりあえず、隣にいる男の人に声をかけてみよう。

「すいません」

「はい?」

おぉ、応えてくれた。

「俺、気が付いたらこの馬車に乗ってたんですよ。だから、行き先とか分かんなくて…」

「えっ、君もかい?実は俺もそうなんだよ」

「へ?」

「RPGゲームのアンケートに答えたのは覚えてんだけど、それ以降の記憶が無いんだ」

って、お前もかいぃぃぃぃぃ!!まったく、頼りになんねーな。他の人に話を…。

「え、あんたもかい?実は俺もなんだよ」

「あれっ?ここにいる理由を知らないのは、俺だけじゃなかったのか?」

「俺も、アンケートに答えたと思ったらここに…」

…もしかして、この馬車に乗ってる人は皆、俺と同じなのか!?これじゃ話を聞いても先に進めねーじゃねぇか!どうしろっていうんだよ、まったく…。これじゃゲームが進まねぇ。

ん?なんか馬車の隅っこに人だかりができてるな。何だ何だ?

「なぁ、君ってシオン君だろ?よくテレビに出てるよね」

「あ、えっと…」

「ウチの娘がファンなんだよ。サインくれないかな?」

「こんなところで有名人に会えるなんて意外だな。握手してくれないか?」

「う…」

よく分かんねーけど、俺と同い年くらいの奴がオッサンに囲まれてる。んで困ってるっぽい。

助けてやるか。

「すいませーん。こいつ俺のダチなんで、2人にさせてくれませんか?」

「あぁ、そうなのか。邪魔してごめんよ」

よし。無事にオッサン集団からモヤシ野郎を救出できたぞ。

「おい、大丈夫か?男のくせにオッサンに絡まれるとか、珍しいなお前。何者だ?」