「もう一回閃光手榴弾をお見舞してやればなんとかなるかもしれないけど…そんな隙なんてコイツには無いから無理だ！」

「じゃあ、一旦俺が囮になるからその隙に…ぎゃあっ!?」

ビリリッ！

はー、はー…あっっぶねー…避けてなかったら死ぬとこだった…心臓に悪いわ。てか、服が破けただけで済んで良かったー。

「一人で立ち向かうには危険すぎるよ！いくらカオルでも、囮になるのは無理だ！喰い殺されておしまいだよ！」

ヒュン！

うわ、コイツ、シオンが放った矢を軽々と避けやがった。

「じゃあ、どうしろっていうんだよ!?」

「僕にも分かんないよ！」

ガキィン！

ギ…ギギ…。

くそ、レイピアが折れそうなくらい力が強ぇ。ガードしてるだけじゃ、いつか隙を見て殺される。

どうすれば…。

…痛っ！何だ!?

あぁ、この前シリアちゃんを助けた時の傷か。傷薬のおかげでだいぶ治ったけど、まだ力を入れたらズキズキするな。

…そうだ！

カラン。

「!?何してるの、カオル!?武器を捨てたらガード出来な…」

『キシャアーッ！』

ガブッ！

「カオルー!!」

ポタッ…ポタッ…。

いたたた。やっぱり噛まれるとめちゃくちゃ痛いな。傷口を噛まれたから、なおさら痛い。

でも、このチャンスを逃すわけにはいかねぇ！

『グ…グルル…』

俺の腕に噛みついたまま、フィーノスの親玉が唸った。牙が俺の腕に深く突き刺さって動けないんだな。予定通り！

「安心しな。俺も一緒に喰らってやるよ」

キイィーン！

『ギャアッ！』

くっ…奴の目の前兼俺の目の前で閃光手榴弾が炸裂したから、目も耳も痛ぇや。

けど、ここでひるんでいられるかよっ！

「奴の動きが止まっている今のうちだ！シオン！」

「了解！えいっ！」

ドドスッ！

『ギャアァー！』

よし、シオンの矢が命中して、ようやく俺の腕から奴が離れたぜ。今のうちに…！

痛い！噛まれた腕がめちゃくちゃ痛い！うあぁ…泣きてぇ。

「カオル、大丈夫!?」

「だいじょばねぇよ！でも、このチャンスを逃したらおしまいだ！でやあっ！」

ザンッ！

『ギャ…ア…ァ…ッ…』

はぁ…はぁ…。

「消…えた…？」

「ってことは、僕達…フィーノスを完全に倒したんだ！」

「マジか！よっしゃあ！」

「早くレイドタウンに帰ろう！このことを報告して、それからカオルの傷の手当てをしないと…」

「あぁ！」