「ところでカオル、どうしてフィーノスの住処が北の森だって分かったの?」

夜、旅の支度をしながら、シオンが言った。

「あー…分かんね」

「分かんない?」

「あぁ。なんか、誰かがこっそり俺に教えてくれたんだけど、誰が教えてくれたのか分かんねぇんだよ」

「ふーん…それって、信用していいのかな?」

「え?」

「もしも、それが嘘の情報だったら、これから僕達に何が起こるか分からないよ?」

うーん…シオンの言うことも一理あるな。でも…。

「でも、今の俺達にはそれしか情報が無ぇんだから、信じるしかないだろ?」

「…うん、そうだね。その人を信じてみようか」

「あぁ!」

まだこの時、俺達はその人物が俺達の進む道に大きく関係することを知らなかった。俺達がそれを知るのは、これからずっと先のことだ。





「本当に行かれるんですか?」

「はい。僕達はこの街を守る為に呼ばれたんですから」

「心配はいらねぇよ、無事に帰ってくるからさ」

「では、お気をつけて…」

わざわざ見送りに来てくれたシリアちゃんと別れて、俺達は歩き出した。

うーん…いかにも冒険の最初のステージ的な場所だな。だだっ広い草原がどこまでも続いてやがる。モンスターとか出てきそうな感じだな。

「痛っ!」

ん?なんか後ろから声が…。

「どうした、シオン?」

「いや、なんか今、足に何かが当たって痛かったから…」

「ふーん…なんd痛っ!」

何だ?何か足に当たっ…。

………………。

「うわぁぁぁぁぁ!!」

キモい!何か透明なアメーバみたいなのが足元にいる!しかもでかい!バスケットボールより多分でかい!でかキモい!

「しししシオン!!こいつ…」

「スライムだね。目も口も見当たらない…モンスターかな?」

「ななななんでお前はそんなに冷静でいられるんだよ!?」

「逆にカオルはなんでそんなに慌ててるの?」

「だってコイツでかキモい!」

「…ぷっ」

「何笑ってんだよ!?」

「いやぁ、カオルはこういうの苦手なんだなーって思ったら、つい…」

「ついじゃねーよ!痛っ!」

お喋りしてる暇は無いみてぇだな…。

「シオン、ちゃちゃっとこいつ倒してやろうぜ!」

「了解!」

俺達は武器を構えた。