『お前の行動範囲を指定する。ここから少し離れた堤防まで、出るな。俺の部下に見張らせておく。それ以上を超えたら、俺がお前を始末する』
無慈悲に吐き捨てる父。
血生臭い部屋で、何も出来ない焦燥と、何も出来ない自分への嫌悪。
『・・・・・・カイル、外に出てみろよ』
『・・・・・・・・・兄ちゃん。ごめん、そんな気になれないんだ』
『今日、天気良いからさ。気分も変わると思うよ?』
優しい兄の言葉を受けて、部屋の外に出る。
潮風が吹く。
目に見える程の行動範囲。
直ぐ先は市が見える。大勢の人々で賑わっている。
定められた、自由。
それでもカイルは毎日堤防に通った。
『っ?!何すんだ、親父!!』
『ようやくお前が動く時が来たぞ。今、再び出てきた“海賊狩り”が邪魔で仕方無いんだ。連盟を作っている所で騒がれたら困る。』
『だから何だよ!!』
『カイル、お前“死神船”と言う船に潜り込んでみないか?』
船。
それは、カイルにとってあまりにも甘い言葉だった。