「俺が、弱すぎるから・・・、殴る気も失せるのか・・・?」


荒くしていた息を整え、カイルは口を結んだ。



「・・・・・・頬が、火照ってるな」

「っ?!」


突然、頬触れる冷たさにカイルは息を呑んだ。
シーザを見上げる。



「・・・・汗で髪が張り付いて、息が上がって、一人じゃ立っていられない位、弱ってる。」


「・・・・・・・・なんだよ」


「まるっきし“女”みてぇで、手も出せないってんだ。」



カイルが眉を寄せた。



「・・・・女だったら、手が出せないのかよ」

「無抵抗な奴を斬っても愉しくねぇっつってるだけだ。」

「同じじゃないか!!親父も、兄ちゃんも、お前も同じだ!俺がみんなと違うからって!」



カイルがシーザの手を振り払う。


「俺は、ただ単に海を渡りたかったんだ!男とか女とか、そんなの関係ないだろ?!」

「おい、」

「俺だって好きで女に生まれた訳じゃねぇよ!折角、俺の“場所”を見つけたのに!」

「・・・・・!」


カイルが壁に手を付き立ち上がる。

一瞬で、床に転がっていた剣を手に取った。



シーザが目を見開く。