それは、遠目ではっきり表情まではわからないけど、ピアノを弾く……

「……私?」

慌てた柚木君は写真を拾おうとして、ゴンッとピアノに頭をぶつけてしまった。

「いてっ」

「大丈夫?」

私が屈んで顔を覗き込むと、柚木君は「あ、ち、ちょちょっと心の準備させて」と言って顔を背けた。

「準備??」

柚木君は写真を手に取ると、そこに写る私を見つめ、一呼吸おいてから

「……あの時、さ──」

話し始めた。

「俺、音楽祭なんてくだらねーと思って、新とふざけ合ってたんだ。他の学年の発表とかも全然聞いてなくて。けど、工藤さんのピアノだけさ……なんか……ちゃんと聞こえた」

え……?

「ちゃんと聞こえたっておかしいか。なんて言うのかな。あ、入場する時に可愛いなーって思ってたのもあったんだけど」

「かっ……」

可愛い??