「なんだあいつ、素っ気ないな。あれ?清水さんもいないね?」

佐々木君がキョロキョロする。

「ゆ、柚木君!!」

私は駆け出してその背中を追いかけた。

「柚木君!!待って!」

柚木君が悲しそうに振り返る。

私が追いかけることが苦しくてたまらないというように。

「柚木君、私、」

あなたを苦しめるつもりなんてない。

なのに、どうしてそんな目で私を見るの?



どうして来てくれなかったの?

話すのはもう、嫌?

聞きたいことはたくさんあるけど。

責めたいわけじゃない。




──あなたが、好き………





ただ、それだけ、伝えたかったのに。

これで最後にするから。

だから、せめて。




「柚木君、私、」

けれど。

「もう、いいよ」

私の最後の告白も、やっぱり柚木君に遮られてしまった。

「もう、いいから。俺のことはもう、気にしないで」

「……」

「全部、忘れて」



──センブ、ワスレテ──



まるで、外国語を聞いているかのよう。一瞬何を言われたのかわからなかった。

やっとその言葉の意味を理解したとき

「今まで、俺が曖昧なことして、振り回しちゃったね。ごめん」

2度目の失恋を経験した。

私達に確実な約束なんてなかったんだもん。

いつどのタイミングで気持ちが離れてもおかしくなんかなかった。

別れてからこんなに時間が経ってしまったのだから。




「ばいばい」




あまりにも感情のない声で、柚木君は終わらせようとするから。


涙すら出ない。