「…けど?」

「素直に甘えとけば良かったのに」

「素直に?」

「そ。あんたすぐ『ナカちゃーん』って半ベソで私に抱きついてきたから遠慮してたけど、本当は柚木があんたの事抱えようとしてたんだよ?」

「うそ……」

「本当本当。私に抱き着くまえに足首触って『いたっ』って言ったじゃん。あれ見て顔色変えてあんたに駆け寄ってきてたのに」

柚木君が?

「もったいなーい。もしかしたらお姫様抱っこしてもらえたかもしれないのに」

「お、お姫様抱っこだなんてっっ」

ムリムリムリムリッ。

「あ、そろそろチャイム鳴る。教室戻ろ」

ナカちゃんがトイレのドアを開けた時、ちょうど通りかかった北川君と柚木君が私達を見た。