午前中、体育館で卒業式の練習が行われた。

その間中、私は手紙を入れた事を後悔していた。

こんなに顔を合わせなきゃならない日に、朝から渡すべきじゃなかったかも。

同じ空間で、もし目が合ったりしたらどうしていいかわからない。

放課後、柚木君が帰る直前にそっと渡すべきだったかな。

体育館に行く途中で靴箱を覗くと、柚木君の外靴がある代わりに、手紙がなくなっていた。

だから、きっともう読んでいるはず。

どう思っただろう?

迷惑だったかな?

放課後、用事があったとしたらどうしよう?

頭の中は、卒業式練習なんかより、柚木君との放課後のことでいっぱい。

ちゃんと来てくれるかな。

「柚木遥斗」

名前を呼ばれた柚木君は

「はい」

返事をしてステージに上がった。