3月初旬。

高校入試。

会場はK高校。

「始め」

静まりかえった教室で、試験官の声だけが響いた。

一斉にパラパラッと開いた問題用紙の音が、緊張感をさらに高める。

今日、朝一でナカちゃんからメールが来た。

「絶対受かるよ!!」

その言葉を胸に、真っ白な答案用紙に文字を埋め始める。

今、同じ時、同じ問題を、私とナカちゃんは同じ会場で解いているんだ。

一緒に受かるために。

Y高校を目指す、北川君と柚木君も、別の場所で同じ問題用紙を見つめてるはず。

柚木君──……。

あれから、放課後図書室でバッタリ会うことが増えた。

でも二人きりではなくて、他の同級生達と一緒に参考書を広げるだけで。

たまに私の隣が空いていると、柚木君が座ってくれたりするけど、何か話すわけでもなく、ただシャーペンを走らせていた。



冬休み中に行われた冬期講習には北川君も柚木君も出席していたんだ。

席は自由だったので、ナカちゃんと北側君は隣に座り、「二人も前に座って」と、私と柚木君を隣同士にしてくれた。

その席はちょうど1年の頃、柚木君と付き合う前の席と同じで、妙な懐かしさを覚えた。

柚木君と1本通路を挟んですぐ隣は、ナオちゃんが陣取ったけどね。

久々に過ごす同じ教室で、私の隣に座った柚木君は、

「寝たら起こして」

って言って、笑っていた。