後ろ髪ひかれる気分ってこういうことを言うんだろうか。

「待ってて」と言った柚木君。

もし、待っていたら、何かが変わるだろうか。

「いいよ。2人待ってるから」

柚木君が私の背中を押す。

「──うん。ばいばい」

「ばいばい」

私はクルッと向きを変えると、アキちゃんとナオちゃんの待つ場所へ駆け出した。





「いいの?」

ナオちゃんが、柚木君を見つけて私に聞く。

いいの?

ううん、いいわけ、ない。

本当は、待っててと言ってくれた柚木君を待っていたい。



そこまで考えて、ハッとした。

『待って』と言ってから、『待ってて』と言い換えた柚木君。

そして、ハッキリと言ってくれた2度目の『待ってて』。

もしかして、それは「今、帰らずに待ってて」じゃなくて──……

振り返ると、まだそこにいてくれた柚木君。

別れてからもいつもそうだった。

振り返ると柚木君は少し離れたところから見ていてくれた。

見つめたら見つめ返してくれた。

それ以上のことは何もないけど、それが柚木君の出来る精一杯のことだったのかもしれない。

だとしたら、今、言ってくれた『待ってて』その言葉は、その言葉の意味は……。