「じゃさ、3人で一緒に帰ろ」

アキちゃんがニッコリ微笑む。

「うん」

アキちゃんとナオちゃんは鞄をつかんで歩き出したのを見て、私も慌てて靴を履き替える。

その時。

息を切らして私のところへ駆けつけた人が、突然私の手首を掴んだ。

「待って」

はぁ、と、息を整えて、見上げる私を見つめ返すのは

「柚木……君」

さっき図書室にいたはずの柚木君。

「……待ってて」

「え……」

「待ってて」

柚木君がそう言ったとき、後ろから「楓花ちゃーん」と、アキちゃんが呼ぶ声が聞こえた。

「アキちゃんとナオちゃんと3人で帰る約束、しちゃって……」

振り返り、二人に「ごめんね、ちょっと待って」と返事すると、私の手首は柚木君から解放されていた。

「ごめん……なんでもない」

触れられた部分が、熱を持ってる。

「や、違った。シャーペン……あったからさ」

そして、柚木君は、私が忘れたシャーペンを差し出した。

「ありがとう」

「勉強、頑張って。やっぱ俺も、もう少し図書室で頑張るわ」

「うん。無理しないでね」

「うん」