「楓……工藤さん」

突然、後ろから私を呼ぶ声が聞こえてきた。

「これ、落としたよ」

「柚木君……」

ノートを開いた時に講習の資料を落としてしまっていたみたい。

「あ、ありがとう」

受け取る手が少し震えた。

『工藤さん』

言い換えられた呼び名は、私と柚木君の距離を表すようで、胸が痛む。

でも、泣くな、楓花。

強くなるって決めたんだから。

「すごい量だね」

私の持つ資料を見て柚木君が笑う。

「うん。今はとにかくやれること全部やれって、先生が」

「そっか。頑張れよ」

「うん。でも、落ちるかも」

「大丈夫」

不思議。

柚木君が応援してくれたら、力が湧いてくる。

「ありがとう。柚木君も、頑張ってね」