ナカちゃんはわざともったいぶって一呼吸置くと

「坂下マネージャー」

と言った。

「うそっ」

「本当本当、バッチリこの目で見たんだから!」

「へぇー……」

驚いて言葉にならない私は、口をポカンと開けたまま声を出した。

そう言えば同じ高校行ったんだっけ。

「でも一緒にいたっていうだけだから、実際付き合ってるかはわかんないけどね」

「うん。でも」

でも、そうだったらいいなってちょっと思った。

「なんか不思議だよね。あんなに、柚木柚木、楓ちゃん楓ちゃん言ってた二人がくっついたんだとしたらさ。時が経つのは早いなーって思うよね」

「うん」

時間はあっという間に流れて行って、みんなその流れに乗って前に進んでるんだな~。

まだ柚木君から卒業なんかできない私は、ひとりポツンと取り残されてる気分。

窓の外を見ると、まだ泥だらけの二人がはしゃいでる。

二人とも汚れて真っ黒なのに、髪の毛も振り乱して、顔をグチャグチャにして笑うその姿が、なぜだか輝いて見えた。