この2週間だって、会いに行こうと思えば行けたはずなのに、柚木君のことよりもマネージャーから逃げることしか考えられなかった私。

一人でとじ込もって、自分の事ばっかり。

「もう、ダメなんだ」

もう、遅い。

「これ、柚木君に返してくれる?」

私は渡せなかった手のひらの中の校章を、ナカちゃんに差し出した。

「楓花……」

あの日、初めてここでピアノを聴いてくれた柚木君の顔を思い出す。

驚いたような、懐かしむような、切なそうな、そんな顔。

でも目が合うと、ほんわり微笑んでくれた。

まるで昨日の事のよう。

「本当にこのままでいいの?」

ナカちゃんが確認する。

「ナカちゃん、部活あるんでしょ?行かなきゃね」

「いいよ、そんなの」

「良くないよ」