握った手の温もりが好きだった。

隣で私の歩幅に合わせて歩く優しさが嬉しかった。

『守る』と抱きしめてくれた腕が勇気をくれた。

私の全部で、柚木君が好きだった。

それは、多分、初めて柚木君に出会ったあの日から。

ずっと。

「楓花、柚木のとこ行ってこよう?何かわけがあるんじゃない?あんた達が別れるなんて絶対おかしいよ」

ナカちゃんは私の手を引っ張るけど、

「ダメだよ」

私は首を振り拒絶した。

「何で?」

ナカちゃんはまるで自分が別れたかのように悲しい顔をする。

でももう、ダメ。

柚木君に頼って甘えて、『助けて』とすがって、『もう、やだ』弱音を吐いて。

柚木君の優しさを信じきれず。

疲れさせたのは、私だ。