「楓花?いる?」

静まり返った音楽室に、ナカちゃんの優しい声が響いた。

「あー、いたいた。柚木がさ、何も聞かずに音楽室行けとか言うからさ、どうしたの?何かあった?」

ナカちゃんは泣き顔の私を見て、心配そうに聞いてくる。

柚木君、どうして?

ふったなら、私なんか放っておけばいいのに。

「あ、もしかして飯田先輩の事聞いた?それで柚木と喧嘩?」

「脩君……?」

「うん。ほらマネージャーのあの嫌がらせ、飯田先輩もグルだったって」

「え?」

「あれ?違った?」

「脩君がグル?」

何それ。

「あ、まだ聞いてなかった?飯田先輩と同じクラスの、テニス部の先輩が昨日部室で話してるのをたまたま聞いちゃったんだけどさ。私もびっくりしたんだよね。

その先輩、柚木が飯田先輩に殴りかかった時、ちょうど居合わせてたみたいで、一部始終を見てたらしいの」