「うそ……」

柚木君のいない音楽室はあまりにも静かすぎる。

「うそだぁ……」

去年、ここで始まった私達。

夏の匂いが胸をときめかせたのに。

今は胸を締め付ける。

『俺と、付き合って……くれない?』

窓の外から、桜の木が黙って私を見てる。

まるで私を責めるように。

堪えきれず私は桜の木から目をそらした。

それでも差し込む陽射しが眩しい。

私はしゃがみ込んで、顔を隠した。