「……うそ、だよね?」

「……うそじゃないよ」

「別れたくない」

「ごめん」

「……やだよぉ」

ずるいよ。

「ごめん」

柚木君、ずるい。

そんな風に辛そうに謝られたら、これ以上駄々をこねること、出来ないじゃない。

別れたくないってすがりたいのに。

出来ない。

「もう……嫌いになっちゃった?」

溢れ出した涙で柚木君の顔が揺れて見える。

「もう……めんどくさくなっちゃった?」

柚木君からの返事はない。

そんなことないよって言ってくれるのを期待したいのに。

もう、ダメなの?

私は自分の校章に触れ。

躊躇いながらも外す。

そして、震える手で柚木君に差し出した。

私なりのさよなら。

なのに。

受け取ってくれない。

代わりに、校章を乗せてる私の手を握って

「学校、ちゃんと来いよ?」

なんて言う。

「ちゃんと食えよ?」

なんて言う。

ずるい。

嫌いになったのなら、諦めがつくくらい冷たくしてくれればいいのに。

握る手の温もりは前と変わらず優しいのに。

もう、私を見つめてはくれないの?

柚木君はそっと手を離すと

「ごめん」

言い残して、音楽室を出て行った。