着いたのは、音楽室。

キューッ。

ドアはまだネジの錆びた音がしていた。

「柚木君……?」

柚木君は黙ったまま窓際まで歩くと、そこから外を眺めている。

帰り支度を終えた学生達の賑やかな笑い声や話し声が、窓を閉めていても聞こえてきた。

柚木君は何を見てるんだろう?

そっと近づこうとした時、柚木君はゆっくり振り返り、今度はピアノの椅子に腰かける。

そして、そっと鍵盤に指を乗せ、ポンと押した。

ポローン……。

音楽室に柚木君の弾いたピアノの音が響く。

「さっきのピアノ……すげぇな」

「え?」

「……いや」

柚木君は何を言いたいのか、微妙な顔をして首を振る。