脩君はすっと肩の力が抜けたようだった。

そして、柚木君を離すと私を1度見て、壁を強く蹴って、去って行った。

柚木君はただ黙って私を見てる。

柚木君に見られる自分があまりにも惨めで、私はまたシャツに顔を埋めた。

「楓……」

柚木君の声にも、体がビクンと反応する。

自分で自分をしっかり抱きしめているのに、震えはいつまで経っても止まらなかった。

「楓……花」

そんな私を、後ろから大きな手が包み込んでくれた。

驚いて少しだけ顔を上げると、柚木君が私を後ろから抱きしめてくれているのがわかった。

「ごめん」

柚木君の声が震えてる。

「ごめん」

震える声で、何度も謝る。

「ごめん」

何度も、何度も。

「ごめん」

最後の『ごめん』は声が掠れていた。

私は

「柚木……君」

柚木君のせいじゃないって伝えたかったのに、名前を呼ぶのが精一杯で。

抱きしめてくれる柚木君の手を握り、泣き続けた。