返事のない私を見て、脩君は何を思ったか、ピッとボタンを押して

「今、体育館裏」

と1言伝え、電話を切ってしまった。

柚木君が来ちゃう。どうしよう?

頭の中はパニックだけど、震える体はどうにもならない。

足の速い柚木君は、すぐに息を切らせやって来てしまった。

そして、私達を見て固まる。

「あ、勘違いするなよ?俺じゃねーよ?俺が助けに入って、なんとか未遂だけどさ。誰が仕掛けたワナかは考えなくてもわかるだろ?」

脩君は柚木君にそう言うと

「こんぐらい助けてやれない彼氏って、どーなんだよ?」

柚木君を挑発するように睨みつけた。

「つーか、お前がこんな事に巻き込んでる張本人なんだよ。わかる?傷つけるしか能がないわけ?」

違う。

柚木君が悪いわけじゃない。

柚木君のせいなんかじゃない。

叫びたいけど、声にならない。