「新!!」

柚木君が走り去る北川くんの背中に向かって、怒る。

「あーもー!」

そして、髪の毛をグシャグシャとかきまぜて、閉めたドアにもたれかかって座った。

「アイツ、本当無神経」

柚木君は髪をかきあげ、ゆびのすきまから私を覗く。

「ごめんね?」

そして謝るから

「何の、ごめんね?」と聞いてしまった。

「え?新があんなんでごめんねって言ったつもりだけど……あ、しちゃったのごめんって言った方がいいのか?

や、でも好きだからしたくなったわけで、えっと」

どもった柚木君は、ノートをうちわがわりにして、「暑いね」って笑った。

「俺、今回のテスト、全滅だわ多分。頭ん中勉強どころじゃない」

「──私も」

そして、また、顔を見合わせて笑った。

こんな日がこれからもずっとずっと続けばいいと思った。

きっと続くんだと思ってた。