「食べ物靴箱入れるか?衛生的にどうなのさ?普通ここは手渡しだろ。手渡しだったら、お礼も言えるだろ」

「ふーん。で、一人でお礼に行けないから俺を呼びに来たわけ?」

「いや別にそういうわけじゃないんだけどさ」

そう言いながら煎餅を食べる北川君は、多分ナカちゃんからの誕生日プレゼントだってわかってて、お礼が言いたくて仕方ないんだと思う。

そしてしばらくの間、黙々と煎餅を食べ続けた北川君は

「工藤ちゃん、これ、旨いわー。んで、嬉しいわー俺」

って、ナカちゃんに伝えて欲しいと言わんばかり。

「北川君、直接言ってあげたらいいのに」

もしかしたら、北川君は最初から私がここにいるの知ってて、私からナカちゃんにお礼を伝えてもらうために、来たのかな。

「えー?へへ。俺、今、アイツに避けられてっから。あー邪魔したね。やっぱ、帰るわ」

大事そうに煎餅の袋をつかむと、北川君は「工藤ちゃん、アイツ、良かった?」ってコソッと耳打ちして、一気に上昇する私の顔の熱を確認してから帰っていった。