「ううん。お父さんは何も――…」



「一緒に暮らさないか、沙亜矢」



しかし、しっかりとした口調でそう告げた。



「え……?」



「ここからは空港も近い。龍児君には悪いが、話を聞いたのに、その家にもう置いておけるわけもない。今からでも、親子に戻れないだろうか」



「…………」



私は答えに迷い、お兄ちゃんを見た。

お兄ちゃんは私を見るなり、笑顔で頷いた。



「お父さんと暮らせば、親父のせいで辛い思いをしなくて済む。本当の姓に戻ると良い。それでもいつか、“藤森”に戻す事になるけど」



「俺の前でプロポーズか。寂しいな、親として」



私は2人のお陰で、実父と暮らす決断が出せた。

父親には、母親がついてる。

私はここで、1人で居た実父が寂しくないように、ある筈だった時間を取り戻す為にも一緒に居たい。

龍児と離れるのは寂しいよ?

けど、いつかまた家族になってくれるんでしょ?

だったら私は寂しくない。

幸せでいっぱい。

嬉しくて、涙が出そうだよ。