鞄を持ち、勢い良く襖を開ける。



「どこへ行くつもりだ」



「……っ」



しかし、行動を先読みをしたらしい父親が部屋の前に立っていた。

襖を締めようにも、足を挟んで来て締まらない。



「お前は一生、俺の道具なんだよ――ッ!!」



「イヤァ゛ーッ!!!!」



私の悲鳴は意味なく、叫ぶ度に腹部を殴られ。

痛みと悔しさだけが残る。



「……もう、嫌だよ……」



逃げるのも疲れた。

いっそのこと、バレてしまえば良い。

そして、私を殺せば良いんだ。

…お兄ちゃん。

私、もう限界だよ……。

――その夜、母親もお兄ちゃんも帰っては来ず、私はママさんと待ち合わせをしてる、近場の産婦人科へと向かった。

光希ちゃんから全て話しといてくれたらしく、悲しそうな表情で抱き締められた。



「沙亜矢ちゃんは、何も心配しなくて良いからね……」



「お忙しいのにすいません。私が馬鹿だったせいで……」


「貴方は何も、悪くないわよ!」



どうして優しくするんだろう。

“気持ち悪い”って、突き放してくれて構わないのに。

家族に襲われるなんてあり得ないって、馬鹿にして良いのに。

もう、何をされても気にしないから。