私はそれから一週間仕事を休んだ。

どうしても彼に見られたくなくて、どうしても彼を見たくなくて、部屋から出る事が
できなかった。

社会人として最低だ。

そう思うのに、いざ出ようと思ったら怖くて歯の奥が鳴った。

私は弱くみっともない人間だった。

かすみ草を好きだと言った自分がその花に似合う人間でない事に、悲しかった。


元気を出せ。

力を出せ。


そう奮い立たせて、私は店に復帰した。

花達の優しい香が私を気遣う様に揺らいでいるのがわかる。

ああ。

花は、植物は、こんな私にどうしていつも優しいのだろう。

次第に心が落ち着いていく。

花は、お腹も知識も満たしてくれないけど心を満たしてくれる。

改めて花の優しさを知る。


元気だそう。


そう思い門前に花を出した時、向こう側で働く彼を見つけて、息が止まった。


彼のほうも私を見つけ、呆然としている。

心臓を冷水で冷やされた様な、世界が真っ暗になる痛みに瞬きすらできない。


彼が、私を見ている。


数日前なら甘くときめいたこの状況が今は地獄の責め苦に思えた。

彼はやりかけの作業を中断させて私に何か言おうとしたようなそんな素振りを見せた。



怖い。



私は視線を逸らし、何も見なかったふりをする。

怖い。

心がずたずたになっていく。


これ以上彼に関わったら自分が壊れると思った。


どうして私はこんなに脆いんだろう。

それがもどかしい。