「アンタが例の咲ちゃんかい。まぁ、良く来たね。今日からけいこだから、覚悟しておいてさ。」「はい…。」
今思えば、私はなんて事をしたのだろうと思いつつある。
会ったばかりの新選組の皆さんにお世話になり、今まで育てて来た、育ての親を見捨て、芸妓になるなんて。話ができすぎていた。
「あぁ…。咲ちゃんか。どおも。私はこの松島の芸妓、美紀です。よろしくね。」「美紀…さん…?」綺麗な女の人が話しかけて来た。
その時だった。
「美紀ィー!お琴だけドォー!」「お琴。どうしたの、はるばるこんな遠くに。多摩はどう?」「ええ。親が農家を辞めるとか言って、抜け出して来たわよ。」又美人な女の人が目の前で話し始めた。
「こんな遠くに、なにしにきたの?誰かに会いに?」初対面の私には関係ない話だと思っていた。「ええ。婚約者に会いに。」「例のふじ…なんだっけ。」「それはもう昔の名前だわ。私の婚約者、実は新選組なの。」
胸が高鳴る。一瞬、土方さんではないかと、不安になりつつあった。
「はぁ…。ま、明日会いにくるから、あの人連れてまた来るわ。」
ヤケに女らしいその人は、私の目を見て微笑んだ。
なんだか嬉しく、切なかった。
「咲ちゃん、私の事は美紀ッて呼んで。私の寝室と貴方の寝室、一緒だから。よろしくね。」「はい!」明るく楽しい人生が始まると夢見ていた。





私は時々、心配になる。




長く終わらない夢をずっと見続けているのではないかと…。