「広田さん、家こっちなの?」
共通点の少ないマミと菜苗は、同じクラスにも関わらず話す機会がほとんどなかった。
「有木さんもこっちなの?」
「そうだよ。」
ある日の帰り道、2人は偶然道端で出会った。それが始まりだった。

「ねぇねぇ、少し話さない??私達あんまり話したことないよね!!私、良いもの持っているんだ。」
そう言って、マミは連れられるままついて行き、この丘についた。
「じゃーん。」
菜苗はバッグの中から、レジャーシートを出した。
「有木さん、これ持ち歩いているの?」
マミは目を丸くした。
「そうだよ。これと、カメラはいつも持っているよ。いつどんな楽しいことがあるかわからないからね。」
そう言いながら、菜苗はスペースを作り始める。
「寝ころんで見て。意外といつも見る世界と違うんだよ。」
2人で寝ころんだ。
見えた空は、いつも見ている空よりも大きく、高く感じた。
「広田さん、キョウダイは?」
「お兄ちゃんが一人。有木さんは?」
「妹がいるよ。四つ下なんだけど、私よりもう背が高いし、強いの。」
「仲良いの?」
「超仲良いよ。うちは親が仲良くないからさ、なんとなく姉妹だけでも仲良くしようってどっかで思っているっぽい。」
「親、仲悪いの?」
「悪いよー。離婚するって何年も言っているもん。」
「うちも親別々に住むって言っているよ。」
「あ、そうなんだー。知らなかったー!」
菜苗の空気はいつもどこか柔らかくて、初めて見た時から友達になりたいと思う存在だった。少し大人びているから、同級生の中でもある意味浮いた存在だったかもしれない。一人でいても気にしない、一匹狼のようなところがあった。なのに、誰しもと言ってもいいくらいクラスメイトは菜苗を慕っていた。こんなひょんなことから、2人の距離は少しずつ縮まっていった。