いつも一緒にいる家族だからこそ、ささいなことに気づき、ささいなことに気づかない。
 それから、旦那さんに寺田さんの今の状態を説明した。旦那さんは、すみませんと言ってハンカチで顔を覆った。何度もいろんな方の涙を見た。本人、家族、お友達…。でも、菜苗達は泣いてはいけない。それは、「冷たい」ということではなくて…強くなくてはいけない。そう思っている。
 でもいつしか、強がってしまうばかりになった。それは、しっかりした患者さんには見破られる。
「あなたは責任感が強いでしょ?私、ここ何日しか話してないけど、あなたのその姿勢を見ていてわかるんですよ。でもこれは、ただのじっちゃまの話しだと思って聞いてもらえればいいんだけども。」
そんなことを言われて、泣きそうになる日もざらではなかった。いつもどこかで糸がピンと張っている感じ。

私のこの糸は、一体いつ休まるんだろう。一体いつ、切れるんだろう。

その糸を強くするには、休みの日に少し休憩をしながら勉強するしかないと思った。