「はい、ユウスケもっと右!」
「こんな感じー?」
「いいねぇ!俺その横行くからよろしく!…はい、みんな笑って。」
チッ…チッ…チッ…カシャ。
パチパチパチパチ…
拍手が起こった。
「映二、よろしくな。」
「ついに来たかー。」
「だいたいのことはわかるよな?」
「おう、わかんなかったらバイトさん達に助けてもらうわ。」
「映二さん、よろしくお願いします。」
「こちらこそお願いします。」
「来週から本格始動ってことで。映二の次は、コウタ?」
「そう、俺。ちょくちょく映二の様子覗きにきて勉強させてもうらからよろしくな。」
こうして俺は、この店の店長となった。
 この【café Lily~】は、元々はトモヒロの店だった。トモヒロは、俺達の中で一番大人ぶった奴で、嘘か本当か知らないけど
「12歳から煙草吸っているんだ。ハタチで辞めようと思ったんだけどなぁ。」
と酔っぱらった時よく言ってよくみんなを笑わせていた。話しもおもしろくて、人付き合いも良くて、男同士にも結構優しい良い奴だった。
トモヒロを紹介してくれたのはケンジで、いつも俺らは3人でつるんでいた。いつも俺は、トモヒロとケンジを頼っているところがあって、でも2人は俺を頼っていると言っていた。いつしか俺らはいつも隣同士に座るような仲になった。

大学3年の時、トモヒロはカフェを作りたいんだと言って、大学卒業と同時にこの場所に店を建てた。高校の時からずっとバイトをしていたらしく、大学に入ってからは朝も夜も働いていた。でも、成績も良くて、本当に要領のいい奴だった。

「俺がここの店長~!」
絵を描くのがそこそこ得意な俺は、店の前に出すメニューボードを描くように頼まれていた。ケンジは、建築学部だったから構造や内装を先頭に立って考えたり、業者との相談を先頭に立って言ってくれた。デザイン学部の奴も紹介してくれて、テーブルやイスのデザインを考えた。そして夜中に集まってはのこぎりやら鉋やらを持ち寄って、テーブルやイスを作ったりもした。
「良い感じじゃん。」
「…みんなマジ感謝してる。ありがとう。」
そう言ってトモヒロは俺達に頭を下げた。
【café~Lily~】のスタートだった。

 コーヒー屋のくせに、開店したばかりの店の中は、海に近いせいか潮のにおいばかりしていた。
「これじゃあ、正直、飲む気なくなるわ。」
仲間の一人の言葉から、慌ててバニラの香りのアロマを焚いたこともあった。こうやって、俺達は俺達のやり方を見つけていった。