あのカフェは今まで何軒か行った中で一番気に入った。同じ気持ちになったマミは、すぐにこの店で働くことになった。
「いらっしゃいませ。」
天気の良い日はここに来るのを日課にしよう。
「カプチーノ一つください。」
この間とは違う、窓際の席に座って、教科書を広げる。頭の中は休むことなく、いつも誰かのことを考えていた。でもたまには深呼吸する必要がある。「自分の時間」を忘れてしまうと、自分では感じていないストレスが身体にかかっているらしく、社会人になってからのこの数ヶ月の間に、2回も40度の熱を出した。過労による免疫力の低下との診断。そういえばずっと頭が重く、たまに片頭痛がした。でも大したことない。そうやって日々過してしまったところに落とし穴。
「自分が元気じゃないと、みんなを元気に出来ないよ。自分を少し大事にしなさい。」
そう上司から言われた。それから、ドライブとカフェめぐりをささやかなご褒美にしようと決めた。
「カプチーノでございます。」
「ありがとうございます。」
「…失礼ですが…この間来てくれた…ナナエちゃん…だっけ?」
「はい!そうです!」「やっぱり。」
店員は、この間会った映二だった。
「マミちゃん、ここで働くようになったんだよ。…って知っているかな。」
「あ、はい。マミがいつもお世話になっています。」
「いえいえ、こっちがお世話してもらっている側ですよ。マミちゃんは器用だから、ほらみて。」
メニューの書かれた看板を指さした。
「あれ、マミちゃんにお願いしたんだ。」
「あの子、素敵な所で働かせてもらうってすごく楽しみにしていて。私もこれからちょくちょくお客さんさせてもらいます。」
「はい、お待ちしています。」
この間よりも笑顔が光って見えた。