ぎゅううっと握りしめて、そんなに握ってたらシワになる、なんてもう思いつかなくて。

そして、その時、渉の空気が変わった。


「…結希、こたえは?俺のことどう思ってるか、聞かせて…?」


それは、私が大好きな顔。

安心させてくれる時の、優しさに溢れた顔。



「…き、渉が…すき…」



言った瞬間に、思いっきり抱きしめられる。


「うん。俺も、結希のことが好きだよ」


ぎゅうっと渉を抱きしめ返して。

夢じゃないことを実感する。

幸せな、幸せな現実。


自分じゃ無理だろうと思っていた。

最初は、いがみあって。

仮面をつけて。

可愛くない、女騎士みたいなお姫様。

そんなお姫様のところには、恋なんて訪れないと。

王子様なんて現れないと、あきらめてた。

ねぇ、だけど。






姫と王子が出逢ったら


それはきっと、必然的に





幸せな、恋へと堕ちるのだから――…