………。
思考が停止する。
今、ねぇ今、なんて言ったの?
何が聞こえたの?
「だれ、が、だれ、を?」
好きって?
疑問が、するりと口から滑り出る。
「俺が、結希を」
そんな私に、渉は諭すように、ゆっくり言った。
渉が、私を…好き――…?
ようやくその言葉の意味を、正しく理解する。
その瞬間、なにかを考えるよりも早く。
「え、ちょっ…結希…!?」
ポロリ、と私の目から涙がこぼれていた。
渉が、突然泣き出した私を見てあたふたしてる。
「結希…?何で泣くんだよ。そんなに、嫌だったか…?」
そんな風に言いながらも、その手は優しく私の涙を拭い取る。
嫌な訳ないじゃない。
ずっと、ずっと、ここに置いておくつもりだったの。
あきらめようと思ってたの。
今日、一緒に卒業するつもりだったの。
ねぇ、置いていかなくてもいい?
あきらめなくてもいい?
卒業、しなくてもいい?
大事な大事な、一番大事な宝物みたいなこの思いを。
私は、この手に持っていてもいいの――…?
「…っ、ふ…わた…、わたる…」
ヒクリとしゃくりあげながら、それでも、目の前の、着るのはきっと今日で最後になる制服を掴む。