…恋を、した。





ガラリ、と教室のドアを開ける。

慣れ親しんだ教室。

たくさんの、思い出が詰まった場所。

すべてはここから始まった。

窓に手をついて、景色を眺める。

ここから見る景色も、今日で最後になる。

激しい雨が降って、雷が鳴った放課後もあった。

渉がそばにいてくれて、何故だか未だにわからないけど、抱きしめてくれて。

すごく、安心した。

告白を聞いてしまった放課後。

自分の気持ちを自覚して、戸惑って。

そのせいで、バレンタインはすこしほろ苦い思い出になった。

だけど。

それすらも、全部が大切な宝物になってる。

ねぇ、渉の好きな子って、どんな人?

渉が選ぶんだから、素敵な人なんだろうね?

切ないけど、それでも渉が幸せなら。

やっぱり、応援したい。

だから、ここで最後にしよう。

この気持ちは、この教室に置いていこう。

今日、一緒に卒業するために。



お調子者で、意地悪で、腹黒くて、ときどき訳のわからない行動をとったり、たまに怖かったりする。

でも、本当はすごく優しいってことを、私はもう、知っている。

そんな、渉だから。




「…好き」





大好き、でした。