頬を赤くさせて照れたように笑いながら自己紹介をした、久城さん。
本当、かわいい。
仲良くなれるといいな。
自然とそう思わせる雰囲気を持った、不思議な女の子。
「ええ。華坂結希です。よろしくね。あなたのことは、なんて呼べばいい?」
「あ…そうだなぁ…。結希ちゃんの好きなように呼んでもらって構わないんだけど…」
「じゃあ、早和って呼んでもいいかな?」
「…うん!」
私がそう言うと、ぱぁっと目を輝かせて頷く。
もちろんまだ出会ったばかりで、どんな子なのかなんて分からないけど。
…でも、この子は信じられる気がした。
「結希嬢もこの学校に通っていたのですね。知りませんでした」
「ええ…私もです。まさか同じクラスになるなんて思ってもみませんでしたよ」
東雲渉が話しかけてきたので、にっこり笑って会話をする。
い・ち・お・う!父の取引先の御曹司なんだし…無下にはできない。
ものすごく嫌だけどね。
「…な、なんか2人の周りの温度が一気に下がった気がするのは私だけかな…」
「気にするな」
視界の隅で早和と陽碧君が小声で話しているのが見えてしまった。
早和には悪いけど、気のせいではないわね。
少なくとも、私はそうだ。
表面上は穏やかに…といっても、余所行き用の笑顔だけれど…会話を続ける。
簡単にいえば、営業スマイルってところかしら。
「ところで、その『結希嬢』という呼称を改めていただけないでしょうか」
「…では、なんとお呼びすれば?」
「その呼称以外であれば、なんとでも」
「それでは、失礼ながら『結希サン』と呼ばせていただきます」
「…それで結構です」
あーもうっ。うさんくさいっ!
本当に、東雲渉という人間は苦手だ。
いつもニコニコしていて、しぐさも丁寧…だけれど、なにか気に食わない。
東雲渉という人は、何をしていてもどこか嘘くさい。
だから、父に言われて何度会ってもその度に苦手意識が強くなるだけだった。