渉は、あくまで優しく聞いてくる。
もっと、何か言われるかと思ってたのに…。
「あんな、クラスの注目を集めてる所でなんて渡せないし…。それに、うかつに人がいるところであげたりなんかしたら、あんたのファンの子達に何されるかわかったもんじゃないもの」
「…何かされたら、俺が助けるのに」
あの時みたいに。
そう、小さく付け足される。
「…いやよ、そんなの」
あの時みたいな、さっきみたいな、渉を間近で見るのは…怖い。
それが、例え私のためであっても。
それに…。
守られてばかりになるのは、絶対に嫌。
私は、お城で守られて、静かに待つお姫様みたいなのはごめんだ。
どうせなら、一緒に戦う女騎士がいい。
隣で、お互いを信頼して背中を預け合えるような。
「…そっか」
私がそう言った理由なんて知らない渉が、今朝みたいな、少し寂しそうな声で同じセリフを言うから。
…だから、きっと魔が差したんだと思う。
「…けど、本当に助けて欲しいときには、渉を呼ぶから。…だから」
「俺を呼んでくれたら。飛んでいって、結希のこと助けるよ。…絶対」
まっすぐに私の目を見て言ってくれたその言葉に、顔が熱くなっていくのを感じる。
なんだかいたたまれなくなって思わずうつむいた。
「…で、これ、いるの?いらないの?」