なにしてるんだ、的な空気が伝わってくる。

そうしている間に目的のモノを見つけた私は、まだ微かに目元に残る涙を拭いて、渉から少し離れた。




「……はい、バレンタインのチョコレート」




差し出したのはいいけれど…なんだか、渉の顔を見れなくて。

うつむいて、渉の反応を待つ。

そして渉は…








「…………え?」


たっぷり5秒は間を置いて、心底間抜けな声を出した。

その声に、そろりと渉の顔を見る。

そこにあったのは、ぽかんと口を開けて、驚いた顔のまま固まっている渉の姿。

……おーい、イケメンが台無しよー?


「……渉?」


未だに動かない渉にそろそろと声をかけてみると、渉はその私の声で我に返ったかのようにハッとした。


「え、バレンタインのチョコレート、って…。無かったんじゃ…」


う。痛いとこ突いてきた。

もちろん無いって言ったのは私ですけど…。


「…作ってたわよ。ちゃんと。…渉の分も」


罪悪感にかられて…、目を合わせることができない。

ふい、と横を向いた私の頬を、渉が優しく正面に戻した。


「…なんで、無いって嘘ついたんだ?」

「………だって」

「ん?」