だって、これ以上、渉と一緒に居たらダメだ。

さっきの言葉がぐるぐると頭のなかを回って、変な勘違いをしそうになる。

とにかく早く家に帰ろう、ときびすを返すと。




「結希」

「……っ」


くい、と腕を引っ張られて。

気が付くともう、渉の腕の中だった。


「ちょっ、離してよ。私帰るんだか…」

「なんで?」


“ら”と続けようとした私を遮って、渉が問いかける。

え、でも、なんで?

なんでそんなに声が怒ってるの!?

帰ろうとしたから?

それだけで…?

内心軽くパニックになりかけている私に、渉は低い声で重ねて問いかけた。


「なんで、明にはチョコレートあげたくせに…俺には無いわけ?」


ビクッと無意識に身体が震える。



うそ…。

なんで、渉が知ってるの?

あの時、渉いなかったわよね?

…実はあの後、昼休み中に明にはチョコを渡したのだ。

もともと3人の分のチョコは持ってきていたし、余らせるのも勿体ないと思って。

渉が席を外した隙に渡したから、知らないと思ってたのに…。





「俺が、気づいてないとでも思ってた?まだまだ甘いね、結希は…」





…どうしよう。怖い。

笑いすら含まれているその声が、冷たい。

あの時みたいだ。