「あれ?俺のことは覚えてないんだね。一度会ったことがあるんだけど」
「…え?」
会ったことがある?
…どこで?
「俺の名前は、陽碧明。…どう?わかった?」
陽碧君…が、クスッと笑う。
その顔はなんとも悪そうで…。
…って、ちょっと待って。
陽碧って、まさか…
「陽碧コンツェルン…陽碧陽介社長のご子息…?」
「正解♪」
今度こそ完璧にニヤリと笑った陽碧君。
…こんな性格だったのね。
ま、私も人のことは言えないけれど…
「皆お知り合いなの?なんか…私だけ?なにも知らないのって」
むぅっとむくれるその姿さえかわいい、唯一知らない女の子。
全体的に色素が薄いみたい。
色白なのに頬はピンクで目はパッチリしているし、唇も桜色。
くるくると巻いた髪も手伝って、ほんわりしたイメージの女の子だ。
それに、顔立ちが少しハーフっぽい。
「じゃあ、お前も自己紹介したら?」
「あ、そっか」
陽碧君に指摘され、目をパチクリさせている。
…なんか、どこか抜けているみたい。
そんなことを思いながら見ていると、少女の頬の赤みが増した。
「そ、そんなに見ないで下さい…。きれいな人に見つめられると、照れちゃう…」
ぱたぱたと手をさまよわせて少々慌てている様子。
…なんか、かわいいな。
見た目もそうだけど、性格も女の子らしくて。
つい、クスッと笑ってしまうと、少女はまた赤くなった。
「え、えと。はじめまして。久城早和っていいます。結希ちゃん…って呼んでも、いいかな?」