…今、一瞬渉がニヤリと笑ったように見えたのは気のせいでしょうか。
いや、気のせいであって欲しい。
ものすごーーーーく、イヤな予感がするんだけど…。
問答無用で逃げ出そうとし始めた私をさらにガッチリと捕まえて、渉は耳元でつぶやいた。
わざわざ!!
耳元で!!!
「俺にも、チョコレートちょうだい?」
「~~~っ!!////」
近い!近いっ!!
しかも周りには聞こえないように小さな声で言ってるし!
わざわざそんなことしなくてもいいでしょう!!
「他の女の子から余るほどたくさんもらってるでしょ!私なんかからもらわなくてもチョコレートはあるじゃない!」
充分すぎるほどにね。
今朝から、明と渉の机の上はラッピングされたチョコレートの山になっている。
本当は学校にチョコレートを持ってきてはいけないことになっているのだけれど…。
あまりのチョコレートの多さとその迫力に、先生達はとっくにさじを投げてしまっていた。
更に机に乗り切らない分のチョコレートは床にタワーを建設中で。
…はっきり言って、通行の邪魔以外のなにものでもない。
「…別に、他の女子からのなんていらないし」
「こらっ!そんなこと言っちゃダメ!!皆頑張って作ってるんだから」
「結希は、くれないわけ?」
「………。」
どうしよう。
正直迷ってるんだよね。
作ってはいる。
持ってきてもいる。
でも…。