満開の桜が並ぶ並木道の先にある学校の門をくぐる。
4月7日。
今日は始業式だ。
今年で中学3年生。
とうとう受験なのかと思うと…なんだか複雑。
張り出されたクラス分けの掲示板を確認して教室へ向かう。
つい2週間前まで当然のように使っていた教室のある棟と向かい合った、別の棟の3階。
『3-2』と刻まれたプレートの下にあるドアから教室へ入ると、もう何人かは到着していた。
黒板に出席番号順で書かれた自分の席を確認し、席へ向かう。
隣の男子の席には、同じクラスであろう3人が集まって談笑している。
男子2人に女子が1人。
…仲がよろしいことで。
心の中で嫌みのような言葉を吐きながら自分の席に荷物を置き、何気なく隣を見ると。
「「…あ」」
声が重なった。
ひとつは、目の前で目を見開いて驚いた顔をしている男子の声。
そしてもうひとつは…私の声。
なんで…ここにいるの?
「渉君…?どうしたの?お知り合い?」
3人のうちの1人…天然パーマなのかしら?
髪がくるくると巻かれている美少女が不思議そうに尋ねる。
「…華坂結希。日本を代表する財閥、華坂コーポレーションのご令嬢」
「え…っ。なんで、知って…」
そのことを知っているのは校長だけのはず。
どうして知っているの…?
その声の主は東雲渉とは違う人で…。
3人のうちの、東雲渉じゃない方の男子。
だから余計に分からない。
信じられない気持ちで、今私の正体を淡々と言ったその人を見る。
隣の席の椅子に座っているから、たぶん私のおとなりさん。
こげ茶色の髪に、整った顔。
にこりと笑った目元は優しげで…。
絶対にモテるわね、この人。
そう確信しながらも、どこか違和感がある。
…この人、どこかで見たことがあるような…。