ある二十代の女性が『てんかん』で運ばれてきた。

脳波をとったが、原因がわからない。

薬は全く効かない。

凄まじい痙攣発作にベッド柵で頭を打ちそうになっている。


のたうつ。


まさに、そんな症状だった。

仕方無く、手足を安全ベルトで固定した。

昔の人は、こんな状態の人間を『狐憑き』と呼んだのだろうと、誰かが言った。

それを聞いて、ある看護師が、痙攣をおこす彼女の横に、塩を盛った。



「ぎぃやあああ!」



凄まじく、彼女は吠えた。

まさしく、吠えた。


そしてまるで溶けるように、塩が湿って消えた。


女性の痙攣は一旦、収まった。


看護師たちは戦慄しながらも、彼女がてんかん発作を起こすたび塩を盛った。

そのたびに塩は湿って消え、痙攣は治まった。


なぜ、彼女が獣のように暴れるのか、

なぜ、塩が湿って消えるのか、

なぜ、塩を盛ると彼女が叫ぶのか


未だにわからない。